読後の感想文をアップするのは久しぶり。
村上龍の「半島を出よ」をようやく読み終えた。
途中、中断していたとはいえ、買ってから1年以上経っている。
いくらなんでも遅すぎるとも思うし、まぁ、こんなもんかとも…。
どんな本も下巻になると話の展開が早くなって
読み進むスピードも上がってくる。
下巻はこの2ヶ月ぐらいで読み終えてしまった。
で、感想はというと、久々に面白い小説だと思った。
彼の作品はどれも完全なフィクションなんだけど、
どれも怖いくらいにリアリティがある。
『希望の国のエクソダス』しかり、『共生虫』しかり…。
この本も、読んでいてとても怖かった。
特に経済や政治、国際情勢などの描写は、
まるで未来を予見しているかのようだ。
昨年のリーマンブラザースの破綻とほぼ同時に始まった
100年に一度と言われる大不況の嵐が世界を駆けめぐり、
日本でも基幹産業である自動車産業の業績が急激に悪化、
大量の派遣社員切りが行われて、
世の中には職だけじゃなく、
財産も、家も失ってしまった人たちが溢れている。
この小説は、国の財政が破綻した後に
職や財産、家を失ったホームレス達が集まる、
都内の大きな公園から話が始まるが、
年末から話題になっている派遣村は、
この冒頭部分をそのまま再現したような感じだと、
きっとこれを呼んだ多くの人が感じているんじゃないだろうか。
村上龍はノストラダムスか??
それに、他の部分についても
相変わらず彼はディテールの描写に手抜きがない。
呆れるほどに良く取材されている。
手抜きがない分、細かくて、少々読むのが辛くなることもあったけど、
そこが村上龍らしさとも言える部分だと思う。
中でも舞台の中心となる福岡市内の描写は非常に映像的だ。
そして、これがこの作品にとって恐らく一番重要な要素だと思うのだが、
主人公が事件の中心から少し外れた人であったり、
本来なら光の当たらないような普通の人であったりするところが面白い。
写真家の荒木経惟がそうであるように、
猥雑で非英雄的な日常にこそリアルがある、ということを
この人はよく分かっていると思う。
どうやら韓国で映画化の話があるらしい。
このリアリティをどこまで映像で再現できるのか。
ちょっと興味がある。
テーマ:ブックレビュー - ジャンル:小説・文学